信太郎は低く小刻みに震える声でもう一度言った。
「ごめん、辛い思いをさせて。本当にごめん」
何度謝っても謝りきれない気がした。
一年近く綾乃と一緒に過ごしてきたのに、心のどこかで夏海のことを考えている自分がいた。
ショッピングに綾乃と出かけていても、気がつけば夏海がこれを見たら喜ぶだろうな、と思っていた。
人気のジェラートを食べていても、気がつけばあいつなら全部食べたいって言うだろうな、そんなことを想像していた。
自分では押し隠してきたはずなのに、それを綾乃は敏感に感じ取っていたのかもしれない。
それはとてつもなく彼女を傷付けたことだろう。
信太郎は頭を下げ続けた。
しばらくの時を置いて、彼女の小さな声が届く。
「もうわかったから…」
それが合図であるかのように、信太郎はゆっくりと顔を上げた。
「もういいの、わかったから」
彼の瞳を見ながら、綾乃は再び、そして次は大きく頷く。
目を細めて微笑むと、がまんしていた涙が一粒、また一粒と押し出されて頬を伝い、彼女の細い顎の先から地に落ちた。
「私のほうこそ天宮くんの気持ちを知っていたのに気付かないふりをしてたの。こんなにも長い間引き留めていて…ごめんなさい」
「綾乃」
「ね、最後に笑ってくれない?さっきナツさんに見せてたような笑顔を私にも見せて」
「……」
「無理にでもいいの、嘘の笑顔でもいいの」


