彼女たちの視線の先には、こちらをじっと見つめる真っ白、いや真っ青な顔をした髪の長い美しい少女が立っていた。
信太郎のカノジョだと、すぐにわかった。
柔らかな髪に絡みついていた彼の指がそろそろと落ちていった。
「どうしたんだよ、こんなところで」
ジャッと彼のスニーカーが音を立て一歩を踏み出したとたん、その美しい少女は一瞬顔をひきつらせ、踵を返した。
あっという間にその小さな体は人混みに紛れていく。
「おい!ちょっと!」
信太郎の足がそれ以上前に出ない。
「何してんの!追いかけなきゃ!」
とっさに夏海は言った。
早く、と彼の手からプリンの小箱を奪い取ると、背中を強く押した。
「ナツ…」
振り返った彼を夏海はもう一度押す。
「早く!見失っちゃうよ!」
彼女の真剣な眼差しに信太郎は頷くと、綾乃を追って走り出した。
彼もまた人の波をかき分けながら消えていく。
周りよりも少し飛び出た信太郎の頭が見えなくなると、夏海は大きく息をつき、駅へと向かった。
電車の窓から見る夕日には弱々しさと寂しさが入り交じっており、彼女はこみあげるものを必死でこらえた。


