「愛してる」、その続きを君に


お待たせしました、と先ほどの店員が小さな白い箱を二つ差し出すと、それを受け取った夏海がひとつを信太郎に渡した。


「さんきゅ」


「信ちゃんの家に行く手間が省けてよかった。おじさんとおばさんの分も入ってるからね。信ちゃんひとりで食べないでいね」


「へいへい」


夏海と信太郎は「ふたりきり」で歩き出した。


「雅樹の分はどうすんだよ、あいつの家にまで持ってくのか?」


彼の母親が夏海を毛嫌いしてることを心配して信太郎は訊いた。


「うん、せっかくだし、持って行こうと思ってる」


彼女も雅樹の母にきっとぞんざいに扱われるのを覚悟しているのだろう、少し沈んだ声になった。


「俺が持ってってやるよ。雅樹に借りてたDVD返さなきゃなんないし、ついでだよ」


DVDを借りているなんて、とっさに口をついて出てきた彼の嘘だった。


「ううん、いいの。私が行かなきゃお礼の意味がないじゃん?」


「まぁ、そうだな」


うん、と彼女は頷くと、信太郎のそんな心遣いに気付いたのか優しく彼を見上げて微笑んだ。


「ところで、DVDってエッチなやつ?」


「ばっ…ばぁか、雅樹がそんなもん持ってるわけないだろ」


「そう?マーくんだって男の子だもん、あるって」


「いやぁ、仮に持ってて見つかってでもしてみろ、あいつの母ちゃんが許さないって」


言えてる、夏海がケタケタ声を出して笑い出すと、つられて信太郎も笑った。


「ね、やっぱりエッチなやつなんでしょ?」


「しつこいって」


「あー信ちゃん顔が赤いし!」


「ああ、もうバカナツが」


信太郎は、柔らかく癖のある夏海の髪をくしゃくしゃとかき回した。


「ひー、やめてぇ」


「おらおら、参ったか。つまんないこと言うからこんな目に遭う…ん…だ」


冗談交じりに悲鳴を上げていた夏海は、信太郎が急に言葉を詰まらせたことを不審に思い顔を上げた。