「愛してる」、その続きを君に



ホームルームが終わると、信太郎はそそくさと一人学校を出て、駅に向かった。


綾乃にはああ言ったものの、用事なんてものがあるはずもない。


肩から鞄を提げ、なんとなく大通りを流れる人並みに体を預けるようにして歩いた。


しかし、意識していなくても見慣れた後ろ姿はすぐ目につきものだ。


夏海だ。


彼女もまたひとりでハロウィンで飾られた店々を見ながら、歩いていた。


距離をとって、信太郎は彼女の後を歩く。


店の前でプラカートを持ったケーキ屋の店員に呼び止められたのか、彼女は足を止め表に出された小さなショーケースをのぞきこんだ。


魔女の帽子をかぶったその店員はしきりに夏海に話しかけると、彼女はなにやら指さしながら笑った。


店員がうなずき、その場を離れると、夏海は待つ時間をもてあますように辺りをキョロキョロ見回した。


やばいな、と信太郎が顔を伏せた時にはもう遅かった。


身長が高いことを恨んだのは、この時が最初で最後である。


「信ちゃーん!」


仕方なく小さく手を挙げて応えると、彼は夏海のもとへ向かった。


「何やってんだよ?」


「ちょうどよかった。おばあちゃんのことで信ちゃんやマーくんにはいろいろとお世話になったからお礼しなきゃって思ってたんだけどね。ほら、今かぼちゃがおいしいでしょ?だからかぼちゃプリン渡そうかなって」


あどけなく笑って指さした先には、オレンジ色のかぼちゃ型の陶器に入った、艶やかに光るプリンがいくつも陳列していた。


「信ちゃん、好きよね?プリン」


「まあな。それよりさ、雅樹はどうしたんだよ?」


「マーくんは今日、進路相談なんだって」


「あいつの場合、相談することもないだろうに」と彼が鼻で笑うと、夏海も「確かに」とおかしそうに笑った。