「愛してる」、その続きを君に



『天宮くん、今日うちで夕食一緒にどう?父も母も会いたがってるの』


秋風の吹く学校の屋上で、信太郎は携帯を片手にサンドイッチをほおばっていた。


マスタードの辛さに顔を歪めながら、


「誘ってもらったのに悪いんだけど、今日はちょっと」と答える。


『あ、気にしないで。今朝ね、急に父が言い出したものだから。ほら、ああいう性格でしょ?』


がっかりした綾乃の顔が浮かんだが、それを悟られまいと一生懸命明るい声で話しているのがわかる。


「ほんとにごめん。また次の機会に」


『うん。あ、ねぇ、今日はちょっとだけでも会える?』


「ごめん、授業が終わったらすぐに帰らなきゃいけないんだ」


『そう…仕方ないわね』


今度は落胆の色を隠すことなく彼女は言った。


「しばらく用事があって。だからまたこっちから連絡するよ。じゃあ、授業が始まるから」


用事って?と深く訪ねられそうな気配を感じて、信太郎は焦って電話を切った。


そして残りのサンドイッチを口に詰め込む。


綾乃が嫌なわけじゃない。


ただ彼女が両親のことを楽しそうに話すのを聞くと、夏海のことを不憫に思ってしまう。


綾乃がうれしそうに店で服を選んだり、カフェで甘いココアを幸せそうに飲んだりするのを見ると余計に夏海をほっておけない、という気持ちが募る。


信太郎は降り注ぐ太陽の光を浴びながら寝転がった。


静かに目を閉じると、耳元でサンドイッチの包み紙がカサカサとなる。


彼の意識の遠いところで、5時限目を告げるチャイムが鳴った。