「愛してる」、その続きを君に



武子の通夜と葬儀が無事に終わり、夏休みを迎えた。


信太郎や雅樹の前では、以前通り明るく振る舞う夏海であったが、どことなく頼りなさが見え隠れするようになっていた。


そのことを彼女自身は気付いてないだろう。


何でも一人で解決しようとして抱え込み、時に痛々しく映る。


その様子がたまらなく彼らにとっては頼りないのだ。


夏休みの間中、雅樹は何かと夏海を気遣い、あちこち遊びに連れて行った。


信太郎も誘われたが、綾乃との約束があるからと言って断っていた。


雅樹の気持ちを知っているだけに、のこのこと邪魔しに行くようなものだ。


何より、夏海のために雅樹が尽くすのを見るのが嫌だった。


羨ましくて仕方なくなる。


しかし、どうしてもという雅樹の誘いで、豊浜の縁日だけは顔を出した。


浴衣姿の夏海はもうオトナの女性を感じさせるほどの魅力を全身から放っていた。


祖母を亡くした悲しみと闘う彼女の美しさに、雅樹がたまらずキスしてしまう気持ちもわからないでもない。


だがその場面を目の当たりにした信太郎の心中は穏やかではない。


悶々とした夏休みを過ごしたものだ。


9月に入り、学校が始まるとまた朝の豊浜駅のホームで夏海と毎日顔を合わせた。


あの笑顔を見るとホッとする、そして言いようのない愛しさと嫉妬がこみあげてきて、それを抑えるために信太郎は海に視線を移すのだった。


朝日に眩しく輝く海が、彼の逃げ場だった。