「ひなちゃん。」

「え…?」


ふと、朝比奈さんの温かくて私のよりも大きな左手が、私の右腕を掴んだ。
そしてゆっくりと引き、背中に隠したはずの右手を前に出させる。


「あ…これはそのっ…。」


私が慌てふためいていると、右手にじんわりと温かさが伝わってくる。


「え…?」


朝比奈さんの両手が、私の右手をそっと包む。
温かくて、優しい…手。


「こんなに手が冷たいって…水仕事してた?」

「いえっ…そんなことは…。」

「すごく荒れてるし…。」


そう言って両手を開いて、私の右手を見つめる。


「あ…あのっ…汚い手なんであんまり見ないで…。」

「汚い手なんかじゃないよ。」


朝比奈さんの温かい言葉が耳に届く。
優しい手が右手を撫でる。


「…心配、するよ。心配くらい…させて。」


小さな声で、朝比奈さんがそう言った。