「どうぞ、麗羅様。お入りください」

本当に事務的にしゃべるコイツが嫌いだ。
気味が悪いと感じる。

「待ちくたびれたぞ。こんなところで何をしているんだ?」

なかなか来ない私たちにしびれを切らしたのか、中にいた人物が姿を現し“早く入りなさい”と入室を促された。



ずっとこんなとこで立ち往生しているわけにもいかないしね…



“失礼します”と声をかけてからゆっくりと動き出した。部屋の中は想像していたものよりも小さく、奥の方に仕事をするための木製の机が置いてあり、書類が積んであった。その横にはコートがかかっており、部屋の中央に接客用のイスが置いてある。


あれ?なんか変じゃない?


なにか違和感を感じるこの空間…
あぁ、そうか。来客用の長椅子がないんだ。来るのが私だから先に除けておいたのかな。
なんだか複雑な気分…。

「竹中」

私が入ったのを確認してから、秘書の名前を口にした。それに対し“かしこまりました”と答る竹中さんが純粋にすごいと感じた。
だって、目的語がないのに何を言われたかなんて全く分からないでしょう。
ま、理事長の考えと竹中さんの考えが本当に合っているかなんてわからないけど。って言いつつ合っているんだろう。

理事長が1人用のイスの前に立ち、机をまたいだ反対側を指し示した。その意味が分からないほど私も馬鹿ではない。何もないところに体を滑り込ませ、理事長ときちんと対面した。