相手も俺の顔とご丁寧に名前をフルネームで覚えてくれていたらしく。

げんなりする俺を下から絶対殺す。次は殺(や)る!心の声がだだ漏れ、殺気立ちまくりなガンを飛ばしてくる。

もしかして。まさか。なんて思いながら、いやいや。だって今は彼女の浮気の方が肝心でしょ?だよね?

なーんて、俺の思いを容易く裏切ってくれちゃう自称・俺より強い男。自称すぎて笑っちまうけど。


「この前は世話んなったな。…詫びさせろよ。」


はい、きましたこの展開。超面倒くせえええええ。

さらに俺の顔はげんなり。もうやだ。助けなきゃよかった。訴えられて金でも何でも取られりゃいいんだ。なんなのこの運の悪さ。


『えー…いい。いらない。』

「あ!?」

『弱いあんたとやっても楽しくないし"おかあさんといっしょ"見てる方がまし。つーか殴る方も痛ぇんだよ?手が。』

「ざ…、っけんなてめえ!なにが"おかあさんといっしょ"だ!!調子こいてんじゃねぇぞ降りてこいや!!」


おっと俺の口。ついつい嘘をつけず本音を零した俺にツガイはぶちギレ。もはやツガイは理向あみなんか眼中にない。俺、だけ。

つーか"おかあさんといっしょ"バカにすんなコラ。てめえだってガキん頃見てただろうが。

あれを見たことねぇってガキんちょ時代を過ごしたやつはちょっとなに見てたの?って感じなんだけどとりあえずお前うっざいわ。


なーんて思いながら、吠えるツガイをしらけた目で見下ろしてからちらり、理向あみに目を向けてみる。

と、予想外に理向あみもこちらを見ていて。ばっちり。目がかち合った理向あみはこいこいと俺を手招きする。