ピタッ。俺の声に男の手は止まる。止まって、こっちに持ち上がった顔は俺を見、「あ?」バリトンが低く低く向けられた。
明るいブラウンの髪。持ち上げられた顔を見た瞬間、あんたかよ…そう俺はげんなりした。
だって、小悪魔女もとい理向あみの餌食となったバカすぎる男はつい先日、俺とやり合った男。3年の"ツガイ"とかいうただの調子乗りだったから。つまりはいきりね、いきり。
やり合ったのは1週間も前なのにツガイの一般よりはまあまあ男前(つまりは中の上)な顔には未だ白いガーゼが貼ってある。
そこまでの怪我だったの?…って、まあ無理もないか。
ツガイが喧嘩売ってきたから強いのかと思えばめちゃくちゃ弱ぇし。
素手でやってもう負けも同然なのに負けを認めないツガイが俺を鉄パイプで殴ろうとしてきたからさ?俺はイラッときてちょーっとだけ本気ってやつを出しちゃったわけですよ。
自業自得だよね。まず弱ぇくせに喧嘩売ってくんなって話。
ちなみに相手はツガイ入れて五人だった。俺一人。しかもツガイ達とは違い無傷。俺圧勝。
「…風吹翼。」
『…。』
あーれ。もしかして面倒くさい展開なんじゃねぇの?これ。