なんて、そんなことを頬杖つきながらはぁー…っとタメ息吐いて思っている間にも好奇の視線と鼓膜に届く、

「ねーえ、翼ー。なにがあったのって。ねーねーおーしーえーてー。」

という弥生お得意の甘え声。


うっるせぇな、誰が好き好んで自虐なんかするかっ。言ったらろくなことにならねぇってわかりきってんのに言うわけねぇだろ。その声で落ちるのは女だけだっつーの。

つーか、男の俺に使うなバカ。鳥肌立つわ。


「よっくんってばー。」

『…、』

「翼。よっくん。翼ちゃん。翼リン。」

『…、(マジしつこ…。)』

「翼ぴょんー…——あ、ねぇ聞いてよ小雪ちゃん。翼たんってすっごい薄情な男なんだよ。」

「え…、」

『…おい、』

「とあるカップルの修羅場に巻き込まれて叩かれそうになった彼女を助けたりその彼女に"あたしの彼氏"とかまさかの交際発言キター!みたいな面白い展開になったのも男のくせに不意をつかれてチュウされたことだって、挙げ句の果てにはなんか物取られたけど"いらねー、捨てれば"なんつって最後は男前にキメてきたぜ、っていうこんな一生ネタにできそうな愉快な話を親友の俺にしてくれないんだよ?酷くなぁい?俺がこんなにもどうしたのって聞いてるのに…しくしく。」

『…、……。』


いや、もう、開いた口が塞がんねぇわ。

どういうことだコラ。