「ねーえ、よっくん、なんでそんなピリピリしてーんの?」


窮屈で退屈な授業から解放された反動でかザワザワと雑音が溢れる休み時間。

未だ治まりそうにないイライラを腹に溜めながら自分の席に座ってそれをむき出しにしていると、聞き慣れた間延びした声。つんつん、と頬をつつかれて——イラッ。

うぜぇ、と凄みを利かせた。


屋上を出たあのあと、そう簡単に煮えたぎったイライラが治まるはずなく授業を受ける気もしないしで保健室に向かった俺。

だけど運悪く保健室の主は外出中で、鍵がかかっていて使用不可。

仕方がないことなのにイラついている俺にはそれさえも癇に障って、結局は授業に顔を出すしかないという始末。

しかも俺が大っっっ嫌いな英語の授業だったらしく、担当教科の奴はちゃっかりやっとけよとプリントだけ俺に渡すと、瞬間鳴ったチャイムでそそくさと退却していきやがった。

誰がやるか、とすぐさま適当に居たクラスメートにそれを押しつけ放棄したのは言うまでもない。


そしてさらに、不機嫌極まりない今の俺がああ、こいつにだけは絶対に会いたくなかったと心底思う奴からの火に油。

金糸弥生(かなり やよい)。

この状況で最も会いたくない人間ナンバーワンのはずなのにぐつぐつ煮えるばかりのイライラの所為ですっかり忘れていた。

それほどまでに理向あみに対しての苛立ちが強かったということだけど。