あっち見てとうるさい(そしてしつこい)理向あみの声にキョロキョロと理向あみが言うあっちに目を泳がせるけど、そこにあるのは水色の空に漂う白い雲だけで。
なんもねぇぞと言いながら振り返ろうとした、ら。ズボッと腰で穿いているスラックスの両ポケットになにかが突っ込まれて。
見てみれば理向あみの手がそこに入っていて、俺が口を開く前にそれはすぐに出ていった。
——理向あみの手には、黒の携帯が握られていた。
「へへっ、いただき。」
顔の横に取った携帯を掲げてニッと悪戯に笑う理向あみに本日何度目になるのかわき出る殺意。
こんのクソ女(アマ)ああああああ!!!
もう鬼にでも化けれそうなぐらい怒り爆発。なんであっち向いたの!?マジでバッカ!!俺!!
同時にこんなばか正直な自分が恨めしい。
ついほんの3分前ぐらいに理向あみは大嘘つきだっていう新事実を目の当たりにして体験までさせられたくせに。やられた…。
絶対ぇ海に沈める。もう決定事項だ。
だけどその前にまず——。
『取ってんじゃねぇよボケ。返せ。』
「いーっや!」
『…、(殺!!)』
携帯目掛けて手を伸ばせば、理向あみはそれを上手く交わし、つーんとそっぽを向く。


