あれ、嘘泣き~。
にへっと、悪びれもなくそう言って性格とは真逆のよくできすぎた顔に咲いた笑顔。
こっいつ…。マジで腹立つ。死ぬほどうざい。女に対してここまで腹立ったのは初めてだ。
おちょくってるのかと聞けば、当たり前だと言わんばかりに返ってきた二文字。
プライド捨ててまで謝って、惹かれまでもしたあの弱さは嘘?いきなりキスなんざしてきやがって。バカにすんのもいい加減にしろ。
ずっと我慢していた堪忍袋の緒は切れた。
『てっめえ…っ、』
「——あ!」
『あ!?』
「あれ!見てみてあっち!なにあれ!?」
俺が溜まりに溜まった怒りをぶちまけようとした刹那、俺の背景に広がる空をいきなり物珍しそうな声をガキみたいに上げて指差し出した理向あみ。
うるせぇクソ女(アマ)、今んなことどうだっていいんだよ。
なーんて、悪態吐くけど、ねぇねぇ、とワイシャツを掴んで(触んじゃねぇ)自分が指差す方に向けと促してくる理向あみにつられて思わずなんだよとそっちに振り向いてしまうバカな俺。
——この瞬間、これが理向あみの策略だとどうして気づかなかったのか。
またしても俺は理向あみの手に踊らされてしまった。悪知恵女め!
『おい、なんもね——、!!』


