なんなの、俺。バカなの?いや頭は悪ぃけど、とりあえずこんな最低最悪の女でとどまらず男の敵でもあるような小悪魔女なんかに——バカなの?
惹かれたとはいっても好意とかそういう類いのものじゃない。断じてない。死んでも言い切れる。
だけどその"弱さ"に惹かれて。それはたぶんあのときの、俺が強い女とレッテルを貼ったときの理向あみを目にしたから。
理由がそうじゃなかったらもう俺、末期だ。潔く死ぬ。
とんだところで自分を自分で羞恥に苦しめた俺は、一旦落ち着こうと小さく気づかれない程度に息を吐く。
そして、相変わらずなんの反応もない理向あみにシカトされ続けるのもいい加減マジで堪忍袋の緒がぷっちん寸前だから仕方なく。ほんっとーに!し、か、た、な、くっ!
『——お、』
"い"、と口を開いてやややけくそ気味な口調で続こうとした理向あみを呼ぶその言葉はぴたり、と止まる。
『(は?なに——、)』
ザワリ、嫌な予感がする。今まで散々俺の死ぬまで家宝に(略)謝罪をシカトし続けて動かなかった唇が、クスッ、なんて小さな笑いとともに怪しく弧を描いた。
ていうか、"クスッ"!?なにこいつ、俺に喧嘩売ってんの?
プライド捨ててまで謝ってやった俺に対してシカトし続けた挙げ句笑うなんざ、見上げた根性をしてやがる。
ピキッピキッと浮かぶは怒のマーク。女だろうが売られた喧嘩は買うのが礼儀。俺のポリシー。後悔しやがれ、誰に喧嘩売ったかこのバカ女——。
「うっそぴょーん。」


