『(え、ちょ!嘘だろ!?)』
歩き出したツガイにギョッと目が見開く。あり得ねぇ…なんで帰んの!?
ここは俺が帰る役だろ空気読めよ!つーか読んでお願いここに居て。もう後ろから飛び蹴りやっちゃうぞとりゃっ。
…なーんて、ツガイの後ろ姿を見ながらそんなこと(結構本気で)思っても口には出せなかった俺。
だってさ?ツガイの背中が寂しかったんだもん。可哀想だったんだもん。腹を押さえてるからかちょっとおじいちゃんに見えたけど。
今の俺と同じで。…いや、一緒にしちゃダメだな。俺とツガイの気持ちは違う。
本気で惚れていた女にボロくそに言われてフラれ。俺には反射的とはいえ逆に殴り返されて。ここから一刻も早く立ち去りたかったんだと思う。
惨めで、悔しかったんだと思う。
『(…声かけなきゃよかった。)』
それなら、本当に。俺も、ツガイも。こんなことにならずに済んでいたはずだ。
でも、声をかけなかったら理向あみは確実に殴られていた。
わかっているのに見て見ぬふりをするのは絶対無理。かけるしかなかった。
それは仕方がないこと。なんだけど——。
「…ふう。やっと帰った。」
俺とツガイがこんなことになったのは全部こいつがかき回してくれたおかげ。


