蹲ったまま痛みを耐えているのか動かなくなったツガイ。
そんなツガイを俺の腕から離れた理向あみはじっと見つめる。唇は一文字。
『(なんか言えよ…。)』
彼氏が痛がってんのに黙ったままただ見つめる彼女って薄情すぎるだろ。あ、でも理向あみからしたらツガイはもう元カレってか遊び相手か…。
『…、』
ちらり。理向あみを盗み見る俺。
そんじょそこらの芸能人やアイドルなんかより数倍可愛いその容姿。だけど、性格は噂通り最悪だった。さっきツガイと言い合っていたときにそれを確信。
口も女なのに結構悪かったし、男癖も悪いし。いいのは見た目だけで、あとはバツ印ばーっかり。
容姿だけで騙されて最後に泣くのは男。女(理向あみを筆頭に)って怖ええええ。
『(つーかさ、)』
ひたすら流れ続ける沈黙。なんか喋れよ切実に。そもそもこの沈黙ができたのは俺の所為なんかじゃない。事の発端はお前だ、理向あみ。ああああ。この空気、無理。
『俺、』
と、口を開いた瞬間。
不格好に"れ"の形で即停止。
不意に蹲っていたツガイがゆっくりと起き上がったから、俺の沈黙から脱け出そう計画は遮られたのだ。
そしてツガイは立ち上がると、腹を手で押さえたまま俺達を見ることなく踵を返していった。


