§魂呼びの桜§ 【平安編】






麗景殿皇后が、ふと脇に目をやると、藤壺中宮が泣いていた。





我が世の春を喜んでおられる



憎らしいお方



左大臣の姫に生まれ、いつも衆目の中にあり、そして、わたくしから主上の愛を奪った方



いつも私より一歩先を行く……



なんと、なんと、目障りなことか……






人の恨みとは、いつも誤解より生じることの方が多い。



麗景殿のそれも、そのようなものであったのだが。



それゆえに、根は深かった。