藤壺中宮は、人知れず涙を流していた。 止める術すらわからぬほど、涙はあとからあとから溢れ出す。 少将があまりに美しいからか……。 その人の腕に抱かれることは、もう決して望むことなどできないからか……。 いずれにせよ、幸せゆえに流す涙でないことは、確かだった。 己の、運命を悲しむ涙。 女人としての絶頂にある人が、なぜそのように泣くのか。 その理由を知るのは、中宮その人しかいない。