高鳴る胸をどうすることもできず、姫はずっとその場に佇んでいた。
胸に大切な扇を押し戴いたまま……。
この香が、あの方を知る唯一のしるべ。
だから何があっても、この扇だけは無くしてはならない。
いつの間にか月が天頂に達していた。
姫は、公達の去って行った林をじっと見つめた。
もう戻って来るはずもないのに。
心に刻まれた面影を追うように、ただ一心に彼の去ったほうを見ていた。
胸に大切な扇を押し戴いたまま……。
この香が、あの方を知る唯一のしるべ。
だから何があっても、この扇だけは無くしてはならない。
いつの間にか月が天頂に達していた。
姫は、公達の去って行った林をじっと見つめた。
もう戻って来るはずもないのに。
心に刻まれた面影を追うように、ただ一心に彼の去ったほうを見ていた。

