結局。

 三十日以内に、雨神の扉を開く者を連れて来るか。

 それとも。

 少なくとも一年は超える四百日以上、安定した水源を確保し。

 イデアーレの大地を潤す方法を考えなければ、キアーロ自身が今年の生け贄になることになった。

『どんなに目障りな奴でも、一応は王族の端くれだからな』という、キアーロにとっては、ありがた過ぎて反吐(へど)の出そうな現王の『ご』厚情により。

 国庫に眠る金の二十分の一の資金を自由に使って良いことになり。

 隣国リベルタには、喧嘩を売らない、との約束で、イデアーレの八分の一の正規軍がキアーロに従うことになったのだが。

 王子の人生最大の危機を救うべく、当然のように手を上げたドーニを無視して、キアーロは、勝手に城を出て来てしまったのだ。

 そもそも。

 雨神の扉を開く魔法使いを探す場所は、クストーデ大陸全土に及び。

 雨神の扉を開くことの出来た最後の人物の死から、百年はたっぷりと、経っているのだ。

 こんな三十日、なんて短時間。

 国庫に痛手を出さないほどの低予算。

 人海戦術、と言うには程遠い少人数で、かの魔法使いが見つかるなら。

 現時点で、魔法使いの百人は、そこらにいるはずだ、とキアーロは、思っていた。