その日、明け方から初雪が降り、異様な寒さの中で私は目覚めました。
小さな窓の真っ白な結露を片手で拭うと、積もった雪がセキュリティ用の薄暗い照明を反射して、青く光っていました。

 耳鳴りがするほど静かで美しい世界に、しばらくの間見とれていると、不意に病院の強固な門が音も無く開いたのです。


 目を凝らすと、青い服を着た怪しい男性が見えました。

 彼は両腕に銀色の大きなスーツケースを抱えていて、それが照明と雪光を集めて鋭く光っていました。




 『青い作業着の男性』


 私はパニックに陥りながら、それでもさちちゃんの手紙を守らなければならないと、必死で部屋を見回し、母が持って来たクラスメート達の励ましの手紙の中に、託された手紙を紛れ込ませました。



 それから数分後です。

 数十人の看護士さんと医者が病室へ慌ただしく入って来て、わけの分からないまま私は麻酔で眠らされたのです。




 沢山の夢を見ました。

 夢の中で、私は起きなければならない。そう思っていました。

 何度となく夢の中で起きる夢を見て、そしてこれは夢だと思いました。






 そのうちにフード付きのジャケットを羽織った男の子と、ちょっときつい顔立ちの女の子の夢を見るようになりました。
 男の子は中学一年生、女の子は一つ年下の小学四年生だと、私には分かりました。

 断片的な夢です。

 それなのに、懐かしいような、哀しいような、今までに感じたことのないザワザワした感覚が、私の心に押し寄せて来るのです。




 夢の中で私達三人は本当に仲良しでした。




 再び目覚めた時、私の身体は別の病院のベッドの上にありました。その隣で私の手を握ったまま化粧っけの無い母が、いびきにも似た寝息を立てて眠っていました。




 私は、順調に回復していきました。






 ……ごめんなさい。ちょっと、のどが渇いてしまって。