しかし、僕には彼女に会いに行くことはできなかった。

今更目玉を取り返しても、まるで無意味に感じられた。

彼女と一緒にいた方が、僕の目玉は色んなものを見られる。

知らない世界を、見せてもらえる。

それでいいじゃないか。

それに、仮に会いに行けたとして、僕は彼女になんと声をかければいいのか。

「どうも、目玉の持ち主です」とでも言えばいいのか。

……不審者でしかない。


それに何より、彼女が愛しているのは僕の目玉であって、僕ではない。


僕では、意味がないのだ。