バタンッ!
ドアを力任せに閉める。
「くそ………」
さっきから“あの女”の声が頭のなかにひびく。
『あなたのせいで人生がめちゃくちゃよ』
『品のない、卑怯なあの女にそっくりだわ』
『あなたなんか生まれてこなければよかったのよ』
黙れ
黙れ
黙れ…っ!
なんで
今頃あんな奴が
でてくんだよ
「………っ!」
汗で体がびっしょりだ。
まだ
こんなにも
俺は
弱い
汗で張りついてくる煩わしさをなくそうと洗面所にいく。
蛇口をひねり水を勢い良くだした
水がたまっていくのをぼんやりと見つめる。
水面に映った俺の顔は
情けないほど青白かった。
「なんなんだよ」
なんで…………
窓の外に映った満月が視界に入った。
いつもは月なんか気にしない俺が何故か引き付けられた。
そしてその満月がよくみえる
あの場所へと足をむけた。

