あの付けた時から一回も外してない。
「ピアスが…なんだよ」
「お母さんも蓮とお揃いのピアスを蓮と反対の耳につけてたの。」
「!」
「その人言ってたんだよ?“あのこにこの片方をあげました。……お守りとして…”」
俺は昔を思い出す。
これを渡されたのは自殺………、姿を消す前日だった。
『お母さん、』
『蓮。』
『なんで泣いてるの?』
窓の外を見ながら静かに泣いていた。
『…悲しいの?』
『いいえ』
『…痛いの?』
『いいえ』
目元の涙を拭いながら微笑んでくれた。
『じゃぁ…なんで?』
『申し訳ないのよ、あなたに。』
そう言ってゆっくりと抱き寄せた
『こんな…っ…こんな守り方しか…できなくて…ごめんなさいっ』
『お母さん……?』
『蓮…あなたを…守るためのお守りをあげるわ…』
自分の耳から一個を外し、手においてくれた。
『蓮はこれを、お母さんはもう一個を持ってる。……だから…』
『?』
『どんなに…離れてても一緒よ。そしていつかまた…会うときこのピアスをひとつにしましょうね』
「……蓮、」
気付いたときには冷たい雫が一滴頬をつたっていた。
「…覚えて…ったのかよ」
うん、と光が頷く。
「蓮のお母さん、宝物だって。そのピアス。」
そう微笑んだ光が母さんに被る。
「………っ」
光が抱き締めてきた。
「我慢すんなー」
「は、?」
「泣いちゃえ」
「……泣かねぇよ」
「意地っ張り」
だけど俺は光の肩を濡らす。
今だけは
「光のくせに…生意気」
このままで。