東吾も電話から戻ってきていた。



「悪いな、蓮。帰らなくちゃいけないようだ」

「とーごまでっ!?ひかりんが危ないよっ」


絶望という言葉がよく似合う表情をする海


「ほら、帰るぞ。海」

「下までおくるよっ」

「あぁ」

「ありがとう、迎えの車がそろそろ来るだろ」



海は最後の最後まで叫んでいた


大声で叫ぶようなことじゃねぇだろうが


押し倒すな、って言われてもな


無理なもんは無理だし





「蓮っ?どうしたの?」


何も知らないこいつは普通に俺を覗き込む。


「…別に」

「部屋に戻ろうよ」


無言でそれに答える。




しかし部屋に着いた途端、様子がおかしくなった。


「おい、これか……」

「蓮…行きたいところがあるの」


またあの時のような


か細い声。