新撰組のヒミツ 壱

光の勘が“この青年はただの侍ではない”という事を告げている。この青年は、綺麗な顔をしているが、中は血に汚れていると言うことを。


壬生浪士組には、上から局長、副長、組長、監察方などという役職があるらしい。監察とは諜報であり、組長とは剣が優れている者だ。


異様な威圧感を放つ青年が、何らかの役職に付いている隊士であることに間違いは無い。年からして、副長以上はあり得ないだろうが――――。


警戒する光は青年から目を離さない。


無意識のうちに、太刀と脇差しにそれぞれ手を掛けた瞬間のことだ。
それまで、横顔しか見えなかった青年の冷たい視線が、光を捉えた。


下手なことをするなら殺す……、とでも言いたげな眼差しである。


刀を抜いた瞬間、彼の腰にある太刀が、光の喉元に突き刺さってしまうのではないか、という思いまでしてきた。


(………………)


不謹慎ながら、光は久々に出会った、自分よりも強い者に、緩む口元を抑えることができないでいた。