硬い表情をしている光の耳元で囁く山崎は、力ずくで強く押さえつけていた光の両肩をソッと解放した。


「悪いこと言わん。先生の所帰って大人しくしとり。いくら強くても、光は女子や。先生もお前に刀なんか持たせたくない言うとったやろ。な?」


「――山崎……」


優しく言い聞かせるように言う山崎には、すでに冷たい表情はない。


怒るのも、光の心配をしての事だろう。恐らく、本気で光の身を案じて言ってくれているのだ。


だが、そんなことで決意が揺らぐ光ではない。光には確固たる揺るぎない決意と覚悟があるのだから――。


「……戯言を言うな。私は女ではなく男だ。帰る理由が見当たらない」


「訳の分からんこと言うな。お前は四年前から女や。こないなサラシ巻いてるのが証拠やろ」


山崎が押さえつけた拍子に、黒い着物のあわせめが開いていた。そこには、白いサラシがきつく捲かれている。


眉を寄せた山崎は、サラシを険しい表情で見つめると、開かれている襟口を寄せ合わせて、光の服装を整えた。