新撰組のヒミツ 壱

――はぐらかしている。


はっきりとしたことを言わず、曖昧な言葉を選ぶ土方に、光は何とも言えない苛立ちを抱いた。


つまり、土方は普通の入隊試験を執り行ったつもりなのだろう。だが、壬生浪士組随一といわれる沖田。彼に勝利した子供の正体を訝しんだ。


今さらながら危険を感じたに違いない。


何故か苛立ちを感じて、口角を吊り上げると、皮肉った口調で笑って言う。
「――私が危険だとでも? 副長」


「……話は後で聞く。おい総司、井岡を近藤さんの所まで連れて行ってやれ」


――見え透いた挑発には乗らないか。土方は横目で光をちらりと一瞥しただけだった。


この土方という男、なかなか頭の回転が早い。沖田同様、楽しめそうな男である。


薄い笑みを保ちながら土方を見やる光だが、土方は険しい表情を崩さない。彼の瞳の奥に見え隠れするのは、懐疑。そして僅かな闘争心の炎である。


「土方さーん。連れて行くのはいいですが、井岡さんはこの後用事があるようなんですけどね」