新撰組のヒミツ 壱

忌々しくも懐かしい記憶を断ち切るように、光は薄く不敵に微笑む。そして囁くような声音で沖田の背中へ話しかけた。


「沖田さん、降参してください」


「…………ええ、僕の負けです」


そう呟いた沖田の声は、負けたというのにどことなく嬉しそうな、何とも言えない喜悦が混じっているようであった。


それを不審に思う光だが、沖田にはもう邪気や戦意が無いと判断し、背中に突きつけていた木刀を下ろす。


「僕に勝ったってことは、井岡さんは隊士になったんですよね、土方さん!」


にっこりと笑い、土方に尋ねる沖田。既に沖田は、負けたことに対する負の感情が綺麗に消えていたのだ。


対して土方は、眉間に深い縦皺を寄せ、まるで威嚇をするように光を睨みつけていた。


(勝ったら隊士にすることを許可したのは、紛れもなくあんただろ……)
――こんなにも睨まれるとは思わなかった。理不尽の一言に尽きる……と、光は心の中で毒づいた。


「……井岡」土方の声音は暗い。


「はい」


「今からお前の今後について、局長と話をしたい。勿論、お前を含めてだ」