新撰組のヒミツ 壱

「……総司の負け……? 本当に……」


目の前で起こった出来事が、未だに信じられないと言うように、疑いの色を含んだ声音で呟く永倉。


否、永倉だけではない。それは、その場にいる全て隊士の心情を代弁していた。もちろん、それは入り口で様子を見ていた土方、敗北した沖田とて例外ではない。


――信じられない、と。


(……俺は――、僕は負けたのか……)


茫然とした沖田は、自らの背中に押し当てられている固い木刀の感触を感じて、しばしの後にそう悟ったのだ。


敗北の直前までは、勝利を確信していた沖田。頭で理解はしたといっても、すぐに納得して負けを認める事など、到底出来るものではなかった。



一方、光は表情をきつく歪めながら、油断することなく、沖田の背中に木刀を突きつけていた。


実戦ならば、相手の死。もしくは、完全に戦意を喪失し、負けを認めて刀を捨てるまで刀を収めない――。


光の場合、知り合いや味方と稽古をする時にでも、それを忠実に実践してきた。


人間とは綺麗な存在ではない。情報、金、愛……。それさえ手には入れば、簡単に裏切るものだということを身をもって知っている。


――何度も裏切られたから……。