新撰組のヒミツ 壱

理性が底無しに沸き上がってくる殺意を限界まで押し留める。


躊躇して動きが鈍った光を見て好機と捉えたのだろうか。防御をしようと身構えていた沖田が、光の右側を走り抜けた。


(!……しまった……)


今、木刀は左手にあるのだ。先程、利き手の右で手刀を入れようとして、木刀を咄嗟に左に持ち替えたからである。


木刀が無いため、受け止めようがない。死角に入り込まれた光は、沖田の振るった木刀が迫り来るのが見えた。


避け辛いように動きに緩急をつけ、沖田は光との動きをずらして襲いかかってくる。


(……殺す気か……?)


彼の木刀は、光の心臓の位置を寸分の狂いもなく、刺し迫ろうとしていた。


最初は喉。次は心臓。
太い血管が通っていて、真剣であれば必ず致命傷や死に至るようなところを立て続けに狙っている。


触れれば切れるように純粋で、どこまでも冷たい殺意。情け容赦ない数々の斬撃。


――殺す気はないと言えるだろうか。