新撰組のヒミツ 壱

「嘗めないでください」


ひそやかな光の囁きを聞いた沖田は、首裏に訪れた死の予感を敏感に感じ取り、間に木刀を差し込んだ。


両手で打ち込まれたため、手首には光の斬撃を受け止めた強い衝撃が走る。


(……やはりこの人は強い……!)


沖田のこめかみと背中に伝うのは冷や汗。そして背筋を凍らしているのは、長らく感じる機会などなかった死の恐怖だった。


(何故……、一瞬で背後に……)


きっと、“自分は負けるはずがない”と、心のどこかで油断していたのかもしれない……、と沖田は自分を詰(なじ)った。


そんな油断と過信が命取りだというのに、自分は自身の剣の腕に酔っていたのだ。


対等――いや、格上の相手と戦うのに、なんと愚かしいことをしたと、沖田は悔しさに唇を噛みしめた。


強者ゆえに、今まで押し込まれた経験が皆無に等しい沖田は、自然と荒くなる呼吸を止める事が出来ない。