新撰組のヒミツ 壱

次々と問われる心配の声音にゆるゆると首を振り、光は自分に言い聞かせるように「大丈夫だから」や「分かってる」と何度も繰り返す。


背後に立つのは、急いで走ってきたせいだろう、息の荒い烝だった。同じく呼吸が整わない光は、そっと息を吐く。


「……烝は、私が止めたら怒る?」


何を、とは言わない。目的語が無い曖昧な言葉ではあったが、背後では烝が意味を理解し、息を呑む音が聞こえてきた。


「……止めるんか」


「……どうだろうね……」


挑戦的に試すような口調でそう言う光に、山崎は敵に相対しているような、限りなく冷たい声音で言葉を発する。


「邪魔するんやったら」


いきなり彼の殺気が膨れ上がったと思ったら、光の首筋には冷たい指が添えられていた。


「終わるまで眠っとってもええで」


その指は、脈打つ首の太い血管に軽く添えられていた。きっと「邪魔をする」と言えば、すぐさま脳への血流を止めて昏倒させるつもりなのだろう。


「しないよ、邪魔なんかしない。ただ、ね。救えるかもしれない命を見捨ててもいいのか……何も知らないふりをして、死んだ人を嘆けないんだよ」


少しだけ声が震えた。
隠そうとしたのだが、喉に手を当てている山崎が気付かなかった筈がない。