新撰組のヒミツ 壱

「井岡さん、防具は?」


鋭い視線を向けてくる沖田は、笑う光とは対照的だ。しかし、一応は怪我をする可能性を考慮していることから、理性までは失っていないようである。


「いりませんよ、動きを阻害するだけです。貴方こそ、怪我をさせてしまうかもしれませんが……」


にやりと挑発して返すと、沖田の纏う雰囲気が更に荒んだものになる。どうやら、怒らせてしまったようだ。


「……出来るものなら、ね」


お互いに間合いを取って構えた。


沖田は上段構え。油断しているのか、はたまた早い段階で勝負を付けるつもりか。攻撃の構えだ。


――それは、余りにも光の実力を嘗め過ぎているというもの。相手の実力を計れない訳があるまいに。


「始め!」


その声が聞こえた瞬間、沖田が間合いを一瞬で踏み越え、突きを出してきた。


だが、光は構えていない。大刀を肩に担ぐように、薄く微笑みながら立っているだけである。


誰もが、光は沖田の突きに反応できず、敗北するという事を確信した。