そう言われて見てみると、確かに山崎が近くを通っているのが見える。しかし、こちらを一度も見ないのは、きっと気付いていないからだろう。


「………………」


彼が視界に入った瞬間――胸がうるさく鼓動を打ち始める。動悸のようなそれに、光は思わず胸を押さえた。


――何か、落ち着かない……。


そんな光の様子を見ていた山南は、唇に小さい微笑みを浮かべると、「山崎君!」と言って、通り過ぎようとしていた山崎を呼び止めた。


――ち……ちょっと、 山南さん……!


思いがけない山南の行動に、光は少し腰を浮かせた中途半端な体勢を取り、みっともないくらいに動揺してしまう。


「山南さん、こんにちは」


挨拶をした後は立ち去ると思いきや、そのままこちらに近付いてきた。光と山南の前まで来ると、そのままそこに立つ。


ぼんやりと山崎を見上げると、彼も丁度こちらを見ていたため、視線が合った。


「光、山南はんに迷惑掛けんようにしや」

「掛けてない……ですよね?」


その少し上から目線な口調に、むっとした光は、唇を突き出して山南にそう尋ねる。


山南は「はは、勿論掛けていませんよ。光さんと話すのは楽しいですからね」と、人のいい笑みを浮かべた。