自分への暗い感情と山南の表情によって、胸に刺すような痛みを感じたが、ここで山南に賛成してはならないことも確かである。


禁令に違反したとはいえ、同じ釜の飯を食らい、共に汗を流した仲間を容赦なく粛清し、断罪することが出来るのだろうか?


いや、仏の副長に斬れるはずがない。


今後の為にも、そして、今後の為にも……彼の心をここで潰すわけにはいかないのだ。


「……山南さん。法度を犯した者は、同志や仲間なんかじゃありません。斬らねばならない敵です」


「敵……」


小さく呟く山南は、やりきれない……、とでも言いたげにため息を吐く。


すると、しばしの後に「ええ、勿論。分かっていますよ」と、淡い消えてしまいそうな微笑みを浮かべた。


――ごめんなさい、山南さん。
唇を噛み、内心、何度も謝罪を繰り返す。


しかし、ここで生きていくには禁令を犯してはならないのだ。そして、犯した者は例外なく切腹をしなければならない。


だから、謝罪を表立ってすることはないのだ。


視線を下に落としていると、山南が唐突に笑う声が耳に入る。一体何事か、と思い見てみると、彼は中庭の方を見て微笑んでいた。


「山崎君が来たよ、光さん」