新撰組のヒミツ 壱

「黙りやがれ!」


土方副長と呼ばれた美丈夫が一喝すると、道場の中は先程のように、物音一つなく静まり返った。


だが先程と違うのは、非難する雰囲気が消えて無くなった事。


「総司が勝てばいい話だろうが。それともてめえらは、組一番の剣士が負けると思ってんのか?」


乱暴な口調でそう言い放てば、隊士たちは納得して見守る形に落ち着いた。


流石、この壬生浪士組を纏める副長と言ったところだろうか。光は興味深げに土方を見つめていたが、首を振って、再び不敵な笑みを唇に滲ませた。


「では……沖田さん。木刀にしましょう」


「……いいのですか?」


息を呑んで躊躇する沖田は正しい。木刀は竹刀よりも遥かに硬く、真剣には及ばないが、かなりの重さがある。急所に当たれば、怪我では済まない場合もあるのだ。


しかし、光はお互いが同じくらいの手練れだと感じていたため、木刀でもいいだろうと判断したのだ。


「ええ勿論」


光の返答を聞いた瞬間、沖田はスッと眼光を鋭いものにした。


近くにあった二本の木刀の内、一本を投げて寄越す。