それを聞いた山崎は、その幼げな隊士――楠小十郎を観察し始める。全く怪しくない山崎はさすがだと言えよう。


見られていると気づかない楠は、目を見開いて視線が落ち着かない。そして、唇が震えていて、血色が悪かった。


――露骨に怪しい。


それに光は歴史の知識として“楠小十郎”が大物長人・桂小五郎の送り込んだ間者だということを知っていたのだ。


それによって、余計に怪しく見える。


こちらに視線を返した山崎は、光の耳にさり気なく口を寄せると、小さな声で囁いた。


「怯えとるだけにしては……確かに怪しいな。後……付けるで」


耳に掛かる息に身をぴくりと揺らすが、すぐに何もないような澄まし顔を取った。


目だけで了承の意思を示した光。それで通じた二人は、再び無言になると、声を上げる土方の方を見つめる。


「局中法度は局長、副長、組長も……破れば皆切腹だ。ただし、何かやむを得ない理由があるのなら考慮する。


分かったら解散だ」


そう言われた隊士は、すぐに広間から解散していった。中には「破らなければいい」という声も聞こえる。


確かにその通りだ。しかし――と、光は目を鋭く細め、小さく首を傾げた。