「……風呂、入ってくる」



火照った顔を腕や手のひらで隠し、着替えを素早くかき集めると、部屋を抜けて風呂場に直行した。


勢い良く走りすぎたのか、又は、別の事のせいなのだろうか。胸の高鳴りが止まず、痛いほどに鳴る心臓を抑える。




――なに、これ。




疑問を胸の内で呟いてみても、それは一向に無くなることはなく、彼の顔ばかりが立て続けに脳裏に過ぎった。


――嫌じゃない……むしろ、


そこまで考えるに至ると、自分が望んでいたことに身体が発火したかのような熱を持った。


(……有り得ない…………)


身体の中心がギュッと締め付けられるような感覚に戸惑いを感じていた。それは初めてのことで、自分が自分でなくなるようで恐怖さえする。


その一方で今更ながらに羞恥を感じる。顔を片手で覆うと、「ああ」や「うぅ」と言った、意味を為さない呻き声を上げた。


(……風呂に入ろう。風呂から上がったらいつもの私でいられるように……)


何もない。何でもないんだ。


小さく呟いた光は、抱えていた着替えをギュッと抱き締めたのだった……。