書物から目を離した山崎は、冷たい口調でそう言うと、俯く光を一瞥した。


叱咤された時のような勢いは無いが、冷静に聞かれた分、気圧されるような威圧感が光を襲う。


怖い。素直にそう感じた。


たとえ人間が、襲いかかる自然の脅威に抗おうとしたとしても、意味を成さないのと同じで、光と山崎には大きな差がある。


剣や体術、情報収集から立ち回り。潜入先では堅い性格や明るい性格、しまいには遊び人までもを完璧に演じきる。


光は劣等感を刺激される程、全てにおいて山崎に劣っていた。


今回は光自身が完全に悪いと分かっていたため、恐怖を抑えて、ただ頭を下げるしかなかった。


「……申し訳、ありませんでした……!」


悔しさと自責の念で涙が滲む。


しかし、自分の非を認め、謝罪をしているところで泣く訳にはいかず、目を瞬いて涙を乾かそうとした。


「……これからは先を考えろ。生半可な気持ちで人を斬る奴はここには要らない」