新撰組のヒミツ 壱

「ごめんな、井岡君。総司はただ君が強そうだから、勝負がしたくてつれて来たんだ」


言われた内容に脱力する。いきなり道場に連れてこられたのはそのせいか……、とやりきれないため息をついた。


「……そうなのですか。教えて下さってありがとうございます。あの、あなたは……?」


うっすらと愛想笑いを浮かべる光。その中庸な男は手拭いで汗を拭き、愛嬌のある顔でにっこりと笑い返した。


「ああ! 俺は永倉新八って言うんだ。よろしく、井岡君」


「よろしくお願いします、永倉さん」


彼は話が分かる常識人のようだ。そんな人は嫌いではない。それからしばらくの間、永倉と世間話をして友好を深めていた。


すると、先程の大柄な男が 「俺は、俺は!」と大きな体を間に割り込ませてきた。


「原田左之助ってんだ! よろしくな……井岡?だったか」


「はい」


頭を下げたくないと思ったが、一応の礼儀として――そっと軽く頭を下げると、沖田が光の頭を無理矢理上げさせた。


「もう……左之なんかに頭を下げなくていいんです!」


「ちょっ、総司! なんかって何だよ」