新撰組のヒミツ 壱

首を横に振った光は、にっこりと微笑み、やんわりと男の言葉を否定した。


「はじめまして、井岡光と申します。今日は沖田さんに連れて来られたんです」


「総司に?……お前、浪士か? それとも何だ、悪さでもやらかしちまったか?」


少し目を見開いた男は、光と沖田を交互に見やり、びっくりしたように目を瞬かせた。


「いいえ、私は浪士から女子を助けたまでです。なにやら、事情を話さなければならないようで」


困ったような声音で光がそう言うと、男は呆れたように眉を寄せ、悪戯っぽく微笑む沖田を見つめる。


「……総司、またかよ…………」


「だって、井岡さんが強そうだったんですもん!」


責められるような物言いに拗ねた沖田。彼らをよそに、光は話の流れを全く掴めないでいた。


顔には何の表情も出さないが、意味が分からず困惑する光に、さり気なく助け舟を出したのは、中庸な隊士だった。