新撰組のヒミツ 壱

我ながら嘘八百も甚だしいことだ。
あの様な雑兵にすらなれない浪士共を相手に死を恐れたと言うのか。


(…………馬鹿馬鹿しい)


自分で卑下して置いて、屈辱を感じた光。しかしながら、壬生浪士組から早く帰るには、強いことを示さない方がいい。


わざと怯えた様子を声音に滲ませると、沖田は感情の読み取れない声で、「……そうですか」と呟いた。


光は、並行して歩く沖田の表情を窺い知ることが出来ないが、納得していることを願った。


天才剣士と名高い、壬生浪士組・一番隊組長、沖田総司。


刀の腕は勿論のこと、観察眼も鋭いものがある。学は無さそうだが、頭の回転は速いらしい。


恐らく、外見に騙された浪士も、またそれが原因で返り討ちにあった浪士も、沢山いるのではないだろうか。


(――……侮れないな、壬生狼も)


たった今、沖田がこの世で一番危険な男だという認識が芽生えたのだった。