新撰組のヒミツ 壱

――本当に京を騒がせている人斬りなのだろうか。これではあまりにも弱すぎるではないか……。


光は気遣っているような表情を保ちながら、内心感じ取れる男の強さに首を傾げていた。


――暴れ者には見えないな。だけど時々禍々しい気配がする……。


どこからどう見ても酔っ払いにしか見えないのだが、その腰に差している刀を抜けば、案外凶悪な人斬りなのかもしれない。


「私は島原の下男です。随分酔っておられるようですが……大丈夫ですか?」


「……俺ァ酔ってなんかねえよ。それより若造はどきな……邪魔だ」


飛んでいるハエを追い払うように、男は緩慢な動きで手のひらを揺らした。


うっとおしいのか、光を視界に入れようとはしない。

それどころか、男の目は獲物を探すように、次なる島原の店を吟味しているようだ。