新撰組のヒミツ 壱

何の意味があるのか。


朝になれば温もりなど失われてしまうというのに、冷えた身体はなお虚しさが積もるだけではないか。


(……だから島原は嫌いなんだ。遊女もそれに群がる男たちも)


下男の格好をして島原に入った光は、『松屋』の近くで時間を潰していた。


目的の人斬りと山崎が見送りに出てくれば、山崎が何らかの合図を送る。それまでの時間はすることがなく、ただ島原の明かりをじっと眺めていた。


(烝の遊女姿……見てみたいな。きっと綺麗なんだろう)


監察である山崎は、正確な情報を直に得るため、これまでも遊女として潜入したことがあるはずだ。中性的な顔をしている山崎は、遊女の格好をしてもさして怪しまれない。


だが、他の監察方は女装は出来ない。島田魁という監察がいるが、大抵の監察方は彼のように男らしい体つきをしているからだ。


しかし、山崎は忍であるためか、体つきに無駄が無い痩身だ。多少の違和感は軽減される。


光は女のため遊女は出来るが、遊女があまり好きではないため、出来るだけしたくはなかった。