新撰組のヒミツ 壱

「一応、名前やけど。俺は蘭、お前は貫十郎や。俺がその人斬りに酒呑ますから、お前は酔った奴を介抱する振りをして小路で殺れ」


耳元で聞こえる潜められた声に、無言で頷いた。


「俺は『松屋』に行くけど、お前は雇われる必要あらへん。その周りに居ってくれたらええから」


光は胸に手を当てる。そこに感じるのは短刀とクナイの硬く冷たい金属であった。











空は徐々に暗くなり始め、島原の眩しい提灯の明かりが辺りを妖しく彩る。


座敷では酒に酔った男が騒ぐ声、そして女は酌をして上品に笑う声があちこちから聞こえてくる島原。


一夜の快楽を求めて色街に繰り出した男は酒と女を愛し、女は生きるために羽振りのいい男を愛しているのだ。


仮初めの愛。
それは身体だけの虚しい戯れだ。