「それにしても……。
井岡さんは随分お強いのですね」
「強い……ですか? 私が?」
唐突に、沖田が振ってきた静かな問い掛けは、興味に溢れていた。もしくは本当に、何気ないただの世間話に過ぎなかったに違いない。
――他意は無いのだろうか。
だが、光に僅かな警戒心の芽を抱かせるのには十分な内容だった。慎重に、だが何気なく自然に、沖田が何を言わんとしているのかを推測する。
「いやいや……そのような世辞はよして下さい。そもそも、私は刀を抜いていませんよ」
「刀を持っている浪士に囲まれたのに、とても冷静だったじゃないですか」
笑って済まそうとする光だが、沖田は尚も食い下がってきた。沖田の目には、好奇心の奥に、未だ冷たい色がある。
仕方無く、言葉を慎重に選びながら、光は口を開いた。
「……私はあの時、内心では死を恐れていたのですよ。ですから、強くなんてありません。ただ必死だっただけです」
井岡さんは随分お強いのですね」
「強い……ですか? 私が?」
唐突に、沖田が振ってきた静かな問い掛けは、興味に溢れていた。もしくは本当に、何気ないただの世間話に過ぎなかったに違いない。
――他意は無いのだろうか。
だが、光に僅かな警戒心の芽を抱かせるのには十分な内容だった。慎重に、だが何気なく自然に、沖田が何を言わんとしているのかを推測する。
「いやいや……そのような世辞はよして下さい。そもそも、私は刀を抜いていませんよ」
「刀を持っている浪士に囲まれたのに、とても冷静だったじゃないですか」
笑って済まそうとする光だが、沖田は尚も食い下がってきた。沖田の目には、好奇心の奥に、未だ冷たい色がある。
仕方無く、言葉を慎重に選びながら、光は口を開いた。
「……私はあの時、内心では死を恐れていたのですよ。ですから、強くなんてありません。ただ必死だっただけです」



