「人斬りがいる。『天誅』と評して尊皇攘夷に反する輩を片っ端から斬っている奴だ。近頃は島原で金もロクに払わねえで暴れてるらしくてな」


「斬れ、と?」
と、山崎はわずかに目を細めて言う。


「ああ、島原の知り合いに頼まれてな。
――――斬れ」


眉間に皺を寄せたまま、にやりと口元を歪めて笑う土方は、さながら悪人のようである。


「遊女と下男の格好をしろ。遊女は酔わせ、下男は外で待ち受けて斬る。お前らはツラが良いからバレねえだろ」


それを聞いた光が、珍しくも端正な顔を一瞬で歪めた。「最初からその人斬りを殺すことは駄目なのですか?」


「駄目じゃねえが無理だ。奴は島原に入り浸っている。流石に座敷じゃ殺せねえからな。せめて外に出せ」


これは任務で命令だ。だが、それを渋る光を見た土方は、怪訝な表情を浮かべた。


「……どうした、何か不満か」


「いえ……、そう言うわけでは」