だが光は、礼をするという彼女のために、いつか会うとも会わないとも、明白にはしなかった。
ただ、壬生浪士組と野次馬に、自らの罪の潔白を証明するため、彼女の善意を利用したのだ。
――私は彼女を助けただけだ、と。
「すみませんが……。屯所までちゃんと参りますので、手を離して頂けますか」
僅かに不機嫌さを滲ませて、光は自分の手を掴む青年に言うと、彼は少し照れ笑いを浮かべて腕を解放した。
「ああ! すみません、つい」
(“つい”か。恐らく捕縛慣れをしているんだろうな……)
この分だと、恋仲の女性にも捕まえるような手のつなぎ方をしているのだろう……、と光は変なことを考えてしまった。
「僕、沖田総司といいます。
――よろしくお願いしますね、井岡さん」
意味深な言葉に聞こえたのは、狼の巣窟だと言われる屯所に向かっているからだ、と思い、無心に努める。
ただ、壬生浪士組と野次馬に、自らの罪の潔白を証明するため、彼女の善意を利用したのだ。
――私は彼女を助けただけだ、と。
「すみませんが……。屯所までちゃんと参りますので、手を離して頂けますか」
僅かに不機嫌さを滲ませて、光は自分の手を掴む青年に言うと、彼は少し照れ笑いを浮かべて腕を解放した。
「ああ! すみません、つい」
(“つい”か。恐らく捕縛慣れをしているんだろうな……)
この分だと、恋仲の女性にも捕まえるような手のつなぎ方をしているのだろう……、と光は変なことを考えてしまった。
「僕、沖田総司といいます。
――よろしくお願いしますね、井岡さん」
意味深な言葉に聞こえたのは、狼の巣窟だと言われる屯所に向かっているからだ、と思い、無心に努める。



