新撰組のヒミツ 壱

だが光は、礼をするという彼女のために、いつか会うとも会わないとも、明白にはしなかった。


ただ、壬生浪士組と野次馬に、自らの罪の潔白を証明するため、彼女の善意を利用したのだ。


――私は彼女を助けただけだ、と。


「すみませんが……。屯所までちゃんと参りますので、手を離して頂けますか」


僅かに不機嫌さを滲ませて、光は自分の手を掴む青年に言うと、彼は少し照れ笑いを浮かべて腕を解放した。


「ああ! すみません、つい」


(“つい”か。恐らく捕縛慣れをしているんだろうな……)


この分だと、恋仲の女性にも捕まえるような手のつなぎ方をしているのだろう……、と光は変なことを考えてしまった。


「僕、沖田総司といいます。
――よろしくお願いしますね、井岡さん」


意味深な言葉に聞こえたのは、狼の巣窟だと言われる屯所に向かっているからだ、と思い、無心に努める。